小説のクライマックスといえば、戦闘シーンやアクションシーンです。しかしAIに書かせると、どこか説明的で迫力に欠けることがあります。「殴った」「倒れた」の繰り返しで、実況中継のようになってしまうのです。
この記事で分かることは、次の3点です。
- AIの戦闘シーンが単調になってしまう原因
- スピード感を出すためのプロンプトの5つのコツ
- コピペで使えるプロンプト例と仕上げの編集ポイント
なぜAIの戦闘シーンは単調になるのか
原因はシンプルで、AI(人工知能)は「要約」が得意だからです。指示がないと、動きを順番に説明する無難な文章を選びます。その結果、出来事の報告書のような戦闘シーンになります。
たとえば「主人公が敵と戦う場面を書いて」とだけ頼むとします。すると「彼は剣を振った。敵は避けた。」という淡々とした文が並びがちです。
裏を返せば、文体の指示を足すだけで出力は大きく変わります。ポイントは、文の長さ・視点・五感の3つを指定することです。
単調になる理由、しおりも聞いてなるほどって思ったよ。
スピード感を出す5つのコツ
実際にプロンプト(AIへの指示文)に入れるべき内容を、5つに絞って紹介します。
- 1. 文を短く指定する:「1文は20字以内」と伝えます。短文の連打は、それだけで速度感を生みます。
- 2. 視点を固定する:「主人公の目に見えるものだけを書く」と指定します。解説口調が消えて、読者が現場に立てます。
- 3. 五感を混ぜる:音・痛み・匂いを1つずつ入れさせます。「金属音」「頬をかすめる熱」だけで臨場感が出ます。
- 4. 禁止ワードを与える:「〜だった」「〜のだ」など説明調の文末を禁止します。描写が現在進行の動きに変わります。
- 5. 緩急をつける:決め技の直前だけ「時間を引き延ばして」と頼みます。スローモーションの1文が、直後の一撃を際立たせます。
コツを掴む一番の近道は、実際にスピード感のある戦闘シーンを読んでみる
ことです。
5つ全部盛り込むと逆にごちゃつくから、2つくらいに絞るのがコツだね。
コピペで使えるプロンプト例
5つのコツを1つにまとめた、実践用のプロンプトです。Claudeにそのまま貼り付けて使えます。
以下の条件で、剣士の主人公が盗賊と戦う場面を800字で書いてください。条件:(1) 1文は20字以内を基本にする。(2) 主人公の視点から見えるものだけを書く。(3) 音と痛みの描写を最低1回ずつ入れる。(4) 「〜だった」「〜のだ」という文末は使わない。(5) 決め技の直前だけ、時間が引き延ばされたように描写する。
場面や人数、武器を書き換えれば、どんな作品にも流用できます。素手の喧嘩なら「剣」を「拳」に変えるだけで大丈夫です。
出力後の編集では、擬音の重複を削るのがおすすめです。AIは「ガキン」などの音を繰り返しがちです。2回目以降を別の表現に置き換えると、ぐっと締まります。また、決め技の前で改行を1つ入れると、間が生まれて迫力が増します。
迫力が出ないときの見直しポイント
単調に感じるときは、次の3点を調整してみましょう。
- 一文を短く切り、テンポで勢いを出す
- 視覚だけでなく、音や痛みなど五感を混ぜる
- 技の説明より、キャラの感情と判断を優先して描く
見直しポイントを一つずつ潰していくと、確実に迫力が出てくるよ。しおりも根気強くやってみた。
同じ場面で比べる:指示なしと5つのコツ入り
5つのコツの効果を確かめるために、同じ場面を2通りの指示で書かせた場合の違いを整理します。場面は「廃倉庫で、主人公が刀を持つ盗賊と1対1で戦う」です。
指示なしの場合(例):「主人公は剣を構えた。盗賊が斬りかかってきた。主人公はそれを避け、反撃した。盗賊は倒れた。」
動作が順番に報告されているだけで、読者は傍観者のままです。誰がどんな気持ちで動いているのかも伝わりません。
5つのコツを入れた場合(例):「刃が鳴った。頬を熱がかすめる。退がる。踵が空き缶を蹴った。——来る。振り下ろされる光を、肩で逸らした。痛み。構わない。懐に入る。」
文が短く、視点は主人公の体に固定され、音と痛みが入り、説明調の文末が消えています。内容はほぼ同じですが、読者が場面の中にいる感覚が違います。この差は、才能ではなく指示の細かさから生まれます。
戦闘の種類別に指示を変える
5つのコツは土台です。戦闘の種類によって、足すべき条件は変わります。
- 剣戟(武器の戦い):間合いと金属音を重視します。「間合いが詰まる瞬間を1文で書く」と指定すると緊張が出ます。
- 格闘(素手の戦い):体の重さと痛みが中心です。「殴られた箇所の感覚を、その後の動きに影響させる」と頼むと、ダメージが積み重なります。
- 魔法・能力戦:仕組みの説明が長くなりがちです。「能力の原理は戦闘中に説明しない。結果だけを描く」と禁止を入れると、テンポが保たれます。
- 集団戦:全体を描くと散らかります。「主人公の周囲3メートルだけを書く」と範囲を絞ると、迫力が出ます。
うまくいかない指示の例とその理由
よくある失敗は、「迫力のある戦闘シーンを書いて」と形容詞だけで頼むことです。AIは「迫力」を言葉で説明しようとし、「激しい戦いが繰り広げられた」といった要約文を出力します。迫力は形容詞ではなく、短い文・五感・視点の固定といった具体的な書き方から生まれます。形容詞ではなく書き方の条件を渡すのが基本です。
もう一つの失敗は、決着まで一度に書かせることです。800字の戦闘を丸ごと頼むと、後半が駆け足になります。「開始から最初の被弾まで」「形勢逆転まで」のように区切って依頼すると、各場面に密度が出ます。
よくある質問
Q. 戦闘の流れがごちゃごちゃになります。
先に「誰が何をして、どう決着するか」を箇条書きで決めてからAIに渡すと、流れが整理されます。
Q. 描写がワンパターンになります。
「同じ動きを別の言い回しで3案」と頼み、良いものを選ぶと表現に幅が出ます。
Q. 技名や必殺技の説明が長くなってしまいます。
「技の名前は1回だけ出し、原理の説明は入れない」と指示してください。説明は戦闘の外で済ませ、戦闘中は結果だけを描くとテンポが保てます。
Q. 残酷な描写はどこまで頼んでよいですか?
AIには過度な暴力表現を避ける傾向があります。流血を細かく描かせるより、「痛みで視界が揺れる」といった体感で表現する方が、読み手にも伝わりやすく依頼も通りやすくなります。
Q. 何文字ずつ書かせるのがよいですか?
300〜500字ずつが目安です。長くするほど後半が雑になるため、場面を区切って依頼し、最後に自分でつなぐと密度を保てます。
実際にやってみて分かったこと
実際に文を短く指定して書かせてみると、確かにスピード感は出た一方、短文が続きすぎて逆に単調になる瞬間があった。3〜4文に1回、あえて長めの文を挟むよう指示すると、緩急がついて読みやすくなると分かった。
この記事は「AIで小説を書くための技術ガイド」で紹介している記事の1つです。関連する記事もあわせてどうぞ。
スピード感のある戦闘描写のお手本を増やしたいときは、アクションが得意な作家の作品を読み込めるサービス
で文のリズムを分析してみるのもおすすめです。
擬音と余韻の整え方
AIは「ガキン」「ズドン」のような擬音を多用しがちです。擬音は便利ですが、頻度が高いと幼い印象になります。「擬音は1場面につき3回まで。それ以外は、音の質を比喩で表して」と指示すると、「鉄が悲鳴を上げた」のような表現に置き換わります。
決着の後も大切です。戦闘が終わった直後の1〜2文に、疲労や静けさ、勝った実感の薄さといった余韻を入れると、場面が閉じます。「決着後は、呼吸と手の震えだけを描いて、感想は書かない」と頼むと、説明に頼らない締め方になります。
仕上げのチェックリスト
AIの出力を読み返すときは、次の5点を確認してください。
- 説明調の文末(〜だった、〜のだ)が続いていないか
- 視点が途中で敵や第三者に移っていないか
- 音・痛み・匂いのうち、2種類以上が入っているか
- 技の名前や原理の説明で、テンポが止まっていないか
- 決着の1文が、他の文より特別に短く、または長くなっているか
この確認で3点以上に引っかかるなら、プロンプトの条件に不足があります。直す部分を指摘して再生成するより、条件を足して書き直させる方が早く仕上がります。
まとめ
今回のポイントは次の3点です。
- AIの戦闘シーンが単調なのは、文体の指示が足りないから
- 短文・視点固定・五感・禁止ワード・緩急の5つを指定する
- 出力後は擬音の整理と改行で仕上げる
まずは書きかけの作品の戦闘シーンを1つ、今日のプロンプトで書き直してみてください。仕上がりの違いに、きっと驚くはずです。
あわせて読みたい
小説執筆に使えるプロンプトをもっと知りたい方は、noteで公開しているプロンプト集もどうぞ。


コメント